赤い入入入入入入入入

 

 

 

赤くて細い

入入入入入入入入が

ならんでる、うらがわも

入入入入入入入が

ならんでる

 

 

白いあかりがぼううと空気を弛ませ

夜明けを待つ青いラインは

静寂に寄りそってねむる

 

二葉つらなったオレンジの蝶々は

殿軍の清張と密やかに笑い合い

フェンスの雑草はいたずらに足に絡み付く

バイクのエンジンが鼓膜をノックして

アスファルトの白線をはみ出さないように

ただ、ひたすら、わたしは歩くのだ

 五感をとぎすませるのは

 心のいたみを追いやるためだと

 そのときに気づいたのだったか

 

 

鉄条網の隙間に居すわる夜の空に

星も月もみえないのは

赤い入入入入入入入が

邪魔をしているからかもしれない

 

入入入入入入入入入入入入入入入入

赤く光って

 

夜闇にまぎれて

消えてしまおうとする

世捨て人の行進みたいに

 
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永遠の孤独を手に入れる

 

ワタシを侵食するものは
みんな
みんな
消えてなくなればいい
 
氷みたいに融けて
死んでしまえばいい

 

ワタシは誰にもおかされない

誰も
なにも
ワタシに入れないのだ
 

 

 

暗い納屋

 

あぁ、おもいだした
わたしは

あなたにコーヒーをいれていた

薄暗い納屋でひとり
やさいの泥を落としつづける
その、
厳しく乾いた手で
幼いわたしの運んだコーヒーカップを
ゆっくりと持ち上げた


あぁ、そうだわたしは
あなたにコーヒーをいれていた

小さな背丈で
大きなやかんに
熱い湯を沸かし
飲んだこともないコーヒーを

「粉はスプーンに1杯で
 砂糖とクリームは2杯ずつ」

教えられた通り


だいこんやら
ねぎやら
春菊やらにうもれて暮らした
あなたのゆびは
曲がった背中は
がんこなしわは
灰になり煙になって消え去った今でも
わたしの記憶に
ありありとよみがえる


納屋はすでに閉ざされ
愛した田畑は埋められた
だけど
だけど

在り続ける風景

湿った土のむせる匂い
意思つよき口髭
うすく、甘ったるいコーヒーの味

  

  

 

殻と尻尾

 

ことばを自由に使えるような
気がしていたのだけれど

ほんとうのことは
さっぱりことばにはできなくて

けーたいでんわが少し
雑音を混じらせて
あなたとわたしの会話を邪魔するから
余計に

カタツムリが殻を捨てたときのことを
確か話していたのだと思う
それから
どうしてとかげが
しっぽを置いていってしまうかということを

ほんのわずかしか離れていないはずの
生暖かい夜の空気の中で
わたしはあなたを思って
しっぽの丸干しをかじる

ことばにはできない思いは
どこに行くのだろう

雑音の混じる沈黙に溶けて
その鼓膜を震わせればいいのに。

 

 

 

 

笑う権利

 

 

のれんにダメ押しで
ぬかみそに釘打って
失意のずんどこに落ちてったあなたを

笑ってもいいのは
笑って抱きしめてもいいのは

あなたをどこまでも愛している
ひとだけです

  

わたしも笑って抱きしめてあげます

ほら、こうやって。

  

  

  

待つ明日は雨の予報

  

 
強い風
薄い闇

遠くのサイレン
湿った空気

さようなら
今日。
飛ばされないように
手すりにしっかりと掴まって

さようなら
さようなら今日。
夜が明けるのに努力はいらない

ベランダから見える京浜工業地帯は
薄闇空を遠慮なくオレンジに染めている
うようよと動く光は
生き物のようだから、わたしは寂しがらなくてすむ

さようなら
今日。
あの不気味で愛おしい灯かりが、
はやく朝日にとけてしまえばいいのに。

今日の最終電車が
轟音を響かせ
どこかへ向かう人々を乗せて
通り過ぎた

わたしはただ待ち続ける
東の空を睨んで。
 

  

  

ふたつにひとつ

 

  

信じることと
疑うこと

どっちがいいかな

どこまでいっても
たどりつけない。

みんなどこを向いているのだろう。

  

 

 

誰かの、居場所

 

ひとりぶんの隙間ごと
自分を抱きしめたら

誰かといるみたいな
気持ちになって。

誰もいないことは
気づかないようにした。

ばかみたいに、輪っかにした腕が
そのうちに少しずつ縮まってく
誰かの居場所が無くなっていく

自分の背中に手が届く。

自分をしっかりと抱きしめないと
誰も満足に抱きしめられない。

だからわたしは
自分の背中を温めるのだ。

十分になるまで
背中をさすり続けて。

 

  

地球ネット

  

世界がくるくる回っているから
わたしは飛ばされてしまわないように
必死にしがみついている
 
きっと、誰もが必死でしがみついている
 
重力で繋ぎとめられない分は
誰かを愛してみたりする
 
そうしてわたしたちは
手を繋いで
地球を覆っているのだ

  

  

  

  

健全

  

めきめきめきと
皮をやぶって
 
もりもりもりと
土を分けて
 
すくすくすくと
ふたばをもたげ
 
ぴこぴこぴこと
深呼吸
 
 
おはよう。
はじめまして。
どうぞよろしく。
 
 
太陽太陽
おひさまおひさま
風と水と
風と水と
 
 
しゅるしゅるしゅる
根を広げ
しゅたたたたっと
茎をのばす
 
 
あなたがた根無し草なんて
かわいそうね
 
わたしを見てわらった
きらきらきらと
 
わらった

  

  

  

  

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